ゆで卵を色つきのすり身に包み、蒸して揚げたもの。出来上がったものを切って盛り付けたときに、くじゃくが羽を広げたように見えるから「くじゃく」と名前がついたと言われている。今ではくじゃくを作る人は少なくなっているそうだが、鮮やかな色あいで、佐伯ではお祝い事やお正月、運動会のお弁当には欠かせない一品である。材料はゆで卵、タイまたはエソ(中ぐらいの大きさのもの)、卵白、片栗粉、市販の色粉(赤、黄、緑)などを使う。
大分県の東部に位置する佐伯市は、九州で最も広い面積を持つ街の一つです。この街は九州山地に囲まれた山岳地帯、番匠川という一級河川に沿った平野地帯、そしてリアス式海岸が広がる海岸地帯から成り立っています。西南戦争の際、宮崎との県境近くの山岳地帯が戦場となり、西郷隆盛率いる西郷軍の一部が佐伯市に侵入しました。その痕跡として、宇目・直川地区などには今でも台場の跡が残っています。
佐伯市に伝わる「くじゃく」という料理は、ゆで卵の白身を赤く着色し、それを緑色に着色した白身魚のすり身で包んで揚げたものです。この料理は、切ると緑、赤、白、黄色と鮮やかな色合いを持ち、卵の切り口がくじゃくの羽に似ていることからその名前がつけられました。佐伯市は豊後水道に近く、豊かな海の幸に恵まれており、これが郷土料理のすり身加工品づくりに繋がりました。魚のすり身には主にエソが使用されます。エソは小骨が多いため、生で出回ることはほとんどありませんが、すり身やカマボコとして利用されています。佐伯市民にとってはなじみ深い魚です。鮮やかな色合いを持つ「くじゃく」は、お正月などの祝いの席で愛されてきました。
「くじゃく」はその派手な見た目から、特別な機会でよく食べられます。お正月のおせち料理に加えられることがあり、運動会の特別なおかずとしても使われます。地元のスーパーマーケットや道の駅などで、一年中手に入れることができ、身近な料理として親しまれています。
「くじゃく」の作り方は、ゆで卵の殻をむいて、白身の部分を赤い食用色素で着色します。次に、白身魚(主にエソ)の生身をミンチにし、砂糖、塩、卵、片栗粉などと一緒にすり鉢で混ぜます。このとき、すり身に緑色の食用色素を加えておきます。そして、片栗粉をまぶした卵をすり身で包み、蒸します。元々は蒸すことが伝統的な調理方法でしたが、現在は揚げることが一般的です。揚げる際には、180℃の油でさっと揚げて、かたくならないようにします。揚げたり蒸したりした後、卵を縦に切って、断面をくじゃくの羽のように盛り付けて食べます。赤と緑色以外にも、好みに応じて様々な色を使って、くじゃくの羽を再現することができます。近年、人工着色料を避ける傾向から、色素を使用しないバリエーションも増えています。
主な伝承地域:佐伯市蒲江地区
主な使用食材:白身魚、卵